道州制攻撃の先兵=橋下打倒を |
麻生政権・資本家たちは、世界大恐慌によって資本主義が崩壊のふちに立たされたところから、道州制攻撃に出ている。これは改憲・戦争国家化攻撃でもある。道州制攻撃との対決こそ最大の激突点である。麻生は日本経団連とともに、ここに極右反動のエネルギーのすべてをかけている。大阪府知事の橋下がその先兵だ。安倍政権倒壊とともに挫折した改憲攻撃だが、道州制導入を切り口として巻き返しを図っている。 |
首切りと労組破壊攻撃――自治体の丸ごと民営化狙う |
道州制導入への急速な動き |
道州制に向かって、08年に大きな動きが起きた。 |
・08年3月に政府の道州制ビジョン懇談会は、「地域主権型道州制」を内容とする中間報告を出し、11月には自民党が09年1月に道州制基本法案を提出するとの動きに合わせ、ビジョン委員会も法案骨子を定めるとした。 |
・08年5月に、自民党の国家戦略本部は、「中央官庁を1府6省(内閣府と大蔵、環境、内務、法務、外務、国防省)に再編」と提案した。国家公務員の大幅なリストラを含む中央官庁のスリム化を打ち出した |
・08年7月、自民党道州制推進本部は、「限りなく連邦制に近い道州制」という第3次中間報告を出した。11月13日には、道州制基本法案を検討する委員会の設置を決め、基本法案の09年1月通常国会提出を目指す方針を明らかにし、年内に道州制の理念や移行目標などを定めた基本法案骨子をまとめるとした。 |
・08年9月の政権発足時に麻生首相は、公明党と「道州制に関する基本法の制定に向け、内閣に『検討機関』を設置する」ことで政権合意を交わし、所信表明演説でも、国の出先機関を地方に移すなど地方分権を進めた上で「最終的には地域主権型道州制を目指す」と表明していた。 |
・11月13日、民主党も分権調査会で、市町村合併を進めて全国を700〜800の自治体に再編し、最終的には都道府県を廃止して小沢一郎代表の『日本改造計画』(1993年)がうたう「300程度の基礎的自治体」からなる地域主権型の国家を目指す方針を打出した。 |
・11月18日、日本経団連は、「道州制の導入に向けた第2次提言」を発表し、政府自民党の道州制基本法案提出の動きに並んだ。 |
・12月8日、政府の地方分権改革推進委員会が第2次勧告案を発表。「地方分権」から「道州制推進」へ大きく方針転換した。 |
しかし、政府与党は世界大恐慌の直撃を受け、景気対策に追われ、国会解散含みの政治危機の深まりの中で、道州制基本法案の提出に踏み切れないでいるが、その機会を必死にうかがっている |
道州制への視点 |
道州制について日本経団連は、「究極の構造改革」と呼号し、資本主義の再建をかけた明治維新以来の「大改革」のように描く。だが道州制導入とは、日本資本主義の崩壊に震え上がった資本家たちが延命を求めて、破産した旧来の統治形態に代わる唯一の手段としてすがりついたものであり、絶望的な攻撃だ。
自民党道州制推進本部、日本経団連、政府の道州制ビジョン懇談会などからそれぞれの道州制論が出ているが、基本的には
@都道府県を廃止して全国を約10の道または州に分割し、道州に国の役割以外の権限を移譲する、道州に 立法権、行政権を与える、
A市町村を合併(廃止)し最終的に300の新しい基礎自治体に再編する、
B国の役割を外交・軍事などに特化する。
「国の形を変える」国家大改造ということだ。
押さえておきたいことは、「国鉄分割・民営化から道州制を見る」という観点がないと、道州制の正体は見抜けないことだ。道州制でやろうとしていることは驚くほど国鉄分割・民営化とそっくりだ。道州制とは、国鉄分割・民営化を国と地方自治体にあてはめたものであり、国鉄分割・民営化を全社会に拡大したものだ。
橋下のブレーンの上山信一は「本気で道州制を推進するなら国鉄改革をもっと研究すべきでしょう。国鉄には二つの既得権益が貼りついていました。一つは”我田引鉄”の国会議員、もう一つは労組です」と道州制の狙いに国鉄労組破壊の教訓を重ねていることを告白している。
道州制は、旧来の行政改革や教育基本法改悪や公務員制度改革ではやりきれなかった自治労・日教組解体攻撃を、「国の形を変える」ことでなしとげることに核心がある。 |
では日本経団連の第2次提言は何を言っているのか。 |
「究極の構造改革」 |
「道州制が実現すれば、地域内の政策は道州が担う一方で、国は国益を重視した政策に専念することになる」「こうした統治機構の抜本的な改革」が「究極の構造改革」である。
本当の狙いは、都道府県と市町村という現在ある地方公共団体の機構を破壊することにある。つまり、「国の形を変える」こと、既存の統治機構の破壊、エセ「革命」(つまり「究極の構造改革」)が必要なのだ。
何のために?
国と自治体の公務員の全員の「全員解雇・再雇用」、260万人公務員労働者の首切りのためだ。これは現在の都道府県・市町村体制を残したままではできない。つまり雇用の継続を断ち切るために必要なのだ。
都道府県廃止とは都道府県職員の職場を奪い雇用の継続を断ち切ること、市町村制度廃止で職員の職場を奪い、雇用の継続を断ち切ること、これで地方公務員の「全員解雇」の道筋を切り開くことだ。
この過程で権力による公務員労働者に対する選別・差別・分断が行われ、労組破壊が始まる。道州と基礎自治体は、資本家の方針に従う労働者だけを選別して再雇用するのが狙いだ。労組はここで徹底的に破壊される。
国鉄分割・民営化の時も同じだ。国鉄という公共企業の形から民営化という新しい形に変えること、新会社への移行を口実にして雇用の継続を断ち切る。全員解雇・再雇用をふりかざして、労組破壊の攻撃をかけてきた。動労千葉だけがこれを真っ向からとらえ絶対反対で闘い抜いた。
国家と地方自治体の大改造とは、「国の形を変えること」による国鉄分割・民営化型の自治労と日教組の破壊による公務員労働運動の解体であり、その結果として公務員労働者を労働者ではなく、国家に忠誠を誓う官吏にしてしまおうという狙いだ。 |
関西経済同友会提言 |
この点をストレートに言っているのが、関西経済同友会の提言(資料3/34n参照)だ。
提言は、国鉄分割・民営化の教訓の上に立って以下のことを主張している。
410万人いる国家公務員と地方公務員のうち、警官・自衛官など50万人を除いた360万人を「いったん全員解雇」する。
85万人の定員を削減する。教育公務員と現業労働者126万人の職場は最初から公設民営化され、無条件で非公務員化され、いつでもクビが切れる非正規職に置き換えられ賃金を半分にすることが狙われている。
新たなエリートして中央・道州で新規採用されるのは50万人ぐらい、残る解雇された公務員234万人のうち中央・道州で再雇用されるのは100万人ぐらい。「国家に忠実な下僕となり、半分の人員で倍の仕事を引き受ける」と誓った者だけが選別雇用される。
選別・排除された134万人が、国鉄分割・民営化の時の清算事業団のような「公務員支援事業団」という就職あっせん団体送りになる。清算事業団がそうであったように「就職あっせん」などしない、元の職場に戻ることを断念させる機関だ。
410万人の公務員は200万人に削減され、教育労働者を含めると実に260万人の公務員労働者がクビを切られる。
道州制攻撃で自治労・日教組を破壊し、資本家階級と労働者階級の階級的力関係の反革命的転覆を通して、派遣労働者の解雇から正社員解雇に進もうとしている。「正社員は保護されすぎている」「正規と非正規の格差を解消」「解雇4要件の規制緩和」などと宣伝を強めている。公務員バッシングによる「分限免職の自由」と公務員の「非公務員化」によって6000万労働者を「首切り自由」の無権利状態に追いやろうとしている。
|
|
道州制 |
道州制を先頭で推進する江口克彦(政府道州制ビジョン懇談会座長)は、道州についてバラ色の夢を語っている。
四国州についての部分の要約。
「四国は道州として自立できるか懸念されていた。初代州知事に関西で企業経営していた川口が当選した。川口がまずしたことは税制改革で法人事業税、固定資産税を2分の1に、相続税は完全廃止した。法人事業税の低さが呼び水となって関西地域の企業が四国に次々と本社を移転、関連中小企業も続いた。だが本当の移転の理由は知事の行財政改革断行で、行政手続きが効率化、簡素化、スピード化したことであった。企業の利益に立った行政になったからだ。
固定資産税の半額で全国から富裕層が集まってきた。工場が進出し、働く人も四国にやってきた。人口も10%増え、域内生産も4%成長になった。黒字になった財政で国・地方の長期債務の元金も返している。
税制改革、行政改革、教育改革などはすべて企業経営者の観点から行われた。それらは四国州に花を咲かせ、住民を豊かに元気にした」
川口州知事はあたかも四国州株式会社の社長のごとく全権をふるい、大独占企業と富裕層のために力を尽くしている。そのために労働者・人民にあらゆる犠牲を集中しながら、それを無視している。
このように、東海であればトヨタ、関西であればパナソニック、中国であればマツダなど地域を代表する巨大独占資本がその代理人を道州知事に仕立て、思うがままに地域を支配し、国際競争に打って出て、そのために必要な道州法を勝手に次々と制定する。これまであった国(省庁)による資本に対するコマゴマとしたうるさい規制、地方自治体による煩雑な規制を一掃する。「中央集権の打破」とブルジョアジーが改革派然として言うが、これはこの規制緩和のことだ。
教育、社会福祉、医療、雇用など自治体のあらゆる業務が丸ごと民営化される。すべて道州すなわち独占資本の弱肉強食の世界にたたきこまれる。保育所も学校も民営化。水道もゴミ回収も民営化。病院も診療所も民営化。なんでもかんでも民営化だ。金のないやつは保育所に預けるな、学校に来るな、ゴミを出すな、水を飲むな、病院に来るな、ケガするな、という社会になる。だから道州制攻撃は公務員労働者に襲いかかるだけではない。まさに全人民に対するすさまじい攻撃である。
公務員労働運動の解体の上に、ブルジョアジーの独裁権力はかつてなく強化され、中央集権はますます進むのだ。今あるブルジョアジーとプロレタリアートの階級的力関係が反革命の側に圧倒的に優位に転覆する。ここでは目茶苦茶な労働者支配、社会保障や福祉の切り捨て、土地の収用、公害・環境問題、廃棄物処理での強権とデタラメがまかりとおる。
道州は、公務員の定数削減・賃金削減、公共投資の効率化でひねり出した6兆円もの財源で私企業向け産業政策を展開し、経済を成長させ、日本経済を成長路線に復帰させることができると夢を見ている。こんなのは大恐慌の現実でぶっとばされている |